NOT The Nine O'clock News より

ローワン・アトキンソンはその名を轟かす以前にNot The Nine O'clock News という時事的で風刺のきいた番組に出ていた。それには後に映画版ビーンの監督となるメル・スミスともコンビを組んでいた。今回はこの番組のある一つのコントについて考察してみたい。

それは、共演のパメラ・スティーブンソンが訛りのある女性司会者を演じ、先日英国博物館に行ったときに出会った二人の友人に話を伺うというものである。先代の遺産を保存、展示する博物館は、一方で暗いイメージがあり、分からない人には何の意義もないような宝も潜んでいる場所であると述べた上で、二人に博物館についての印象を尋ねる。

一人目のジョーンズ演じるヒューゴは

It's interesting building, isn't it? The primary purpose is, of course, functional. It's a sort of large container of treasure rather than a treasure itself. (博物館は機能的に作られている。あれは財宝そのもとというよりは、宝物を保存する容器のような場所だ。)

ローワン演じるピエールは、相手の一言一言にすでに敵意のようなものを表している。
思わず、司会者の女性はピーエルに「あなたはヒューゴの意見に賛成しないのですか?」と尋ねる。

Of course, I don't agree! Who is this man? He is an insult to me...
Primary purpose is, of course, sexual! It is a massive assertion of phallic power of London.
(賛同しかねる!誰だこいつは!?侮蔑だ。英国博物館の意味というのはセクシュアルだ!それはロンドンの男根の力の凄まじい主張だ。)

とまぁ、英国博物館がセクシュアルな方面へ飛んでいきます。さらに、

...Prince Charles gets married in St Pauls - this enormous titty. The biggest titty in the world.(チャールズ皇太子なんて、こんなオッパイみたいなセント・ポール聖堂で結婚されたんだ。世界で一番大きなオッパイだぞ!)

そして、「誰がそのことを言及している?誰がそのことに触れている?誰も言わないんだ!」と憤激する。ここの英語が Who mentiones it? No one. No one!! なんですが、No one がRowan に似てて、この世でそのことに言及しているのはローワンだ!と自分自身を指していると考えてみたり。まぁ違うのですが。

そして、女性が「この番組を見ている人はあなたが完全に変態だと勘違いしてしまいますよ」となだめると、すかさず

「もちろん私は変態だ!逆にこの国で変態でない人はいない!」

と言う。あぁなんだこの人はという空気が流れる中、さらに

「ロンドンの中心にネルソンの柱が建っているだろう。あれはネルソンの柱ではない。あれはネルソンのペニスそのものだ!巨大なプライベートな部分、それが大気に露出されていて、天空に浸透している。そこには英国がもう一人のネルソンを生み出すようにという希望が込められているんだぞ!つまり、もうひとつのネルソンのペニスだ!」

と力説する。おそらく彼の頭の中では英国にある建物は全てセクシュアルに映っていて、皆がそれに言及しないのが不思議でたまらないのだ。最後は郵便局タワーをあれは Post Office Prick だ!と言い放つ。

さて、このコントは私の中ではかなり上位にランクインします。たしかに建物というのは何かしらのデザイン、象徴性を持っているのは頷けるが、英国博物館の印象をいきなりセクシュアルだと放ち、聞いてもいないのにセント・ポールが titty だ、ネルソン提督の willy だと次々に繰り出すという着想が素晴らしい。当然そんなことを真面目に言う人はおらず、言動がすでに変人変態であることは大前提である。

そしてその言葉の噴出を促すのが英語ならではの発音体系である。ここで特に注目したいのは破裂音で、しかもPである。private part, expose, penetrate, produce, St. Paut, Prince Charles, Post office, Prick などPの発音が非常に多く、聞いていて耳に残り、笑いの壷を刺激する。また空気をするどく噴出す発音を有しているため、必死に語る姿にマッチし、変態度を一層高める按配になっている。

と、このコントは超越している。着想が革命的。それを促進する英語ならではの発音。完璧だ。